incidentは「事件」ではない:accidentとincidentの本当の違いとは?

■今日の英語フレーズ

accident:予期せぬ出来事、事故、災難

incident:発生した出来事、事象、事案全般

■対比でわかる例文

(1) An accident occurred on the highway.
(高速道路で事故[=衝突して損傷・怪我が発生]が起きた)

(2) An incident occurred on the highway.
(高速道路で事案[=落下物や通行止め、事故など何らかの出来事]が起きた)

■incident = 『わざと』『事件』ではない

「結局どう使い分ければいいの?」と悩む単語がありますよね。代表的なものにaccidentとincidentがあります。

学校の授業などで「accident = 事故」「incident = 事件」と暗記した方も多いのではないでしょうか。

「この2つの違いは『わざとかどうか』だよ。accidentはわざとじゃないから『事故』。incidentはわざと起こされたものだから『事件』なんだ」という解説を聞いたことがあるかもしれません。

実は、「incident = 『わざと』や『事件』」ではありません。その覚え方だと実際の英語表現とズレが生じてしまいます。

正しくは、「accident = 予期せぬ出来事、事故、災難」「incident = 発生した出来事、事象、事案全般」です。

今回は、ネイティブが直感的に行っているこの2つの単語の使い分けと、「事件」と言いたい時の正しい英語表現について解説します。

■最も重要なincidentとaccidentの「包含関係」

先に結論を言うと、2つの語の関係性は次の一文に集約されます。

「すべてのaccidentはincidentであるが、すべてのincidentがaccidentとは限らない」

incidentは「事件」に限定されず、「(日常・業務のなかで起こる)出来事・事象・事案」という広い意味を持つ言葉です。一方、accidentは、その出来事(incident)のなかでも「意図せず起こり、かつ実害が出たもの」という特定の範囲を指します。

つまり、事故(accident)が発生するためには、前提として何らかの出来事(incident)が起きている必要があります。この包含関係があるため、「incident = 事件」と一言で言い切ることはできません。

■使い分けを整理する2つの軸

accidentとincidentは、「意図性」と「実害」という2つの軸で整理するとすっきりします。

①意図性(わざとかどうか)

accident:100%意図しない(偶発的な)出来事。わざと起こしたものはaccidentとは呼びません。
incident:「意図的(故意)」 な場合も「偶発的(うっかり)」 な場合も両方含みます。

②実害(被害・損害の有無)

accident:基本的に怪我、破損、損害などの実害を伴います。
incident:重大な損害が出た場合から被害がなかった場合まで、損害の有無や大小を問いません。

■具体例で見る違い

理解を深めるために、身近な例で考えてみましょう。

例①:薬を間違えて飲んでしまい、体調不良になった。
判断:accidentであり、incidentでもある。
理由:意図せず(うっかり)起こり、体調不良という実害が出ているためaccidentです。そして当然、ひとつの「出来事」ですからincidentでもあります。

例②:薬を間違えて飲みそうになったが、直前に気づいて正しく服用した。
判断:incidentであり、accidentではない。
理由:間一髪で防げたため実害は出ていません。したがってaccidentではありませんが、ヒヤッとした事案(ヒヤリハット)という「出来事」が発生しているためincidentと言えます。

日本語のビジネス・医療・IT・報道などで使われる「インシデント(事故に繋がる一歩手前の事象、ヒヤリハット)」は、まさにこの例②の概念に基づいています。

■日本語の「◯◯事件」は英語でどう言う?

ここまでの解説で、incidentは基本的に「事件」ではなく「出来事、事案」と覚えるべきだとお分かりいただけたかと思います(※政治的摩擦や外交上の事件などを指してincidentを使う例外はありますが、一般的な意味は「出来事」です)。

では、私たちが日本語で言う「事件」は英語でどのように表現すればよいのでしょうか。文脈や性質によって使い分けられます。

(1) 警察が捜査する犯罪事件 = case
警察や探偵が捜査・解決しようとしている個別の犯罪事案にはcase (事例・事案) を用います。

case

The police are investigating the case.
(警察はその事件を捜査中である)

(2) スキャンダル・不祥事 = affair, scandal
社会的影響の大きい不祥事や政治的事件にはaffairやscandalが使われます。

affair

scandal

アメリカの歴史的政治スキャンダル「ウォーターゲート事件」はWatergate scandalやWatergate affairと呼ばれます。

(3) 具体的な「犯罪名」をそのまま言う(最も一般的)
日本語では「~事件」と表現する習慣・傾向がありますが、英語のニュースや日常会話では「~事件」という言葉をわざわざ添えず、犯罪の種別を端的に言うのが一般的です。

誘拐事件 = kidnapping

暴行事件 = assault

投資詐欺事件 = investment fraud

■まとめ

最後に、今回のポイントを一覧でまとめます。

単語意味の本質意図性(わざとか)実害(損害・被害)
accident予期せぬ事故・災難必ず「偶発的」あり(怪我や破損など)
incident発生した出来事・事案全般「故意」「偶発」問わない(未遂やヒヤリハット含む)

「incident = 事件」という固定観念を捨て、「incident という大きな出来事の枠組みの中に、実害の出た不測の事故(accident)が含まれている」 というイメージを持っておきましょう。

単語を1対1の和訳で覚えるのではなく、その背景にある「範囲」や「条件」を意識することが、ネイティブの感覚に近づく一番の近道です。

今回は以上です。今日のあなたの精一杯の英語を話しましょう!!

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